現在よく使用されているアラビア書道の書体は以下の7書体ですが、これ以外にも時代や地域により多くの書体が生まれ、そして消えてゆきました。
例えば、ムハッカク、イジャージー(イジャーザ=印可を書くために使用される)、マグレビー(モロッコやチュニジアのみで)などがあります。
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コーランの本文を書き写すために開発された書体で、最も標準的な形をもちます。読みやすく、アラブ世界において印刷用活字書体として広く使用されています。
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オスマン・トルコ帝国の政庁(ディーワーン)で開発された書体。スルタン(11世紀以降イスラム世界の君主を示す称号)が発布する勅書(ちょくしょ)などがこの書体で書かれました。曲線文字の大胆な流れと流麗さに特徴があります。
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上記のディーワーニー書体のバリエーション。芸術的な書道作品を制作するためだけに使用され、日常生活で見ることはまれです。特徴は文字に付加される装飾点の多さにあります。
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コーランの章句を大きく特別に書くために開発された書体。アラビア書道の書体のなかで最も芸術性の高いものです。特徴は線の力強さと深みのある動きにあります。
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14世紀頃ペルシャ(現在のイラン)で開発された書体で高い芸術性を持っています。特徴は流麗さ、優雅さです。ペルシャの詩集など文学的テキストに専ら使用されています。
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イラク南部のクーファという町で開発された古い書体。特徴は直線や円による幾何学的な書体です。唐草模様を配した豪華なデザイン文字装飾書体として使われています。
(出典:作品は『アラビア文字を書いてみよう読んでみよう 本田孝一/師岡カリーマ・エルサムニー著 白水社』より転載)